私の接した経営者①

以前の職場は、パートタイムのスタッフはお客様扱いで、ちょっとした雑用をこなしたり、少し先を読んだ作業をしたりするだけで、経営者に褒められることが多かった。一方、社会保険や年金に加入するフルタイムで働くスタッフに対する経営者の要求は厳しかった。経営者の求める水準に達しないと判断されたスタッフや、価値観の合わないスタッフは、本人への同意の上でという形をとり、フルタイムからパートタイムへの「降格」もあった。

あるとき、先輩のAさんが降格された。ざっくばらんな飾らない性格の先輩だったが、報告・連絡・相談をせずに勝手に仕事を進めてしまうことが多かった。例えば、上司や経営者を飛び越えて、業務の依頼先や取引先の人に相談や連絡をして、自社の者にはあまりしない、など。また、手っ取り早く業務を片付けて、ネットサーフィンをしていることもあった。

経営者に求められたのは・・・Aさんが処理した仕事の書類の見直しをし、どういうミスがあったのか。Aさんからどういう相談を受け、二人でどのように業務を進めたのか。Aさんの仕事ぶりにどういう改善があったのか。水面下で詳しく報告することだった。あくまでも、業務上の連絡や報告なので、私も拒否できない。純粋に、私も、困った先輩のフォローくらいにしか思っていなかった。残念ながら、Aさんの仕上げたものは、間違いも多かった。

経営者への報告の場面は、4回くらい。必ず、Aさんがいない時間帯やシフトに入っていない日に設定された。Aさんの悪口という形は決して取らない。経営者は、あくまでも、取引先への迷惑にならないようにということを前に出していた。しかし、終わりのころになると、ところどころにAさんへの非難が混じってきた。

その時になって初めて気が付いた。「Aさんの改善と取引先様へのサービス改善の両立」という名のもとに、降格させようとしているということに。

 (つづく)