私が接した経営者②
前回の記事の続き。
経営者の意図に何となく気が付いたとき、同時にこれは、私自身も試されていると思った。
何を試されているのか。マネージャーの立場で、部下になっている人たちをしっかり引っ張っていく力量があるのかどうか。経営者の価値観に沿った形で、Aさんを指導できるかどうか。業務上の連絡や相談という形をとりながら、Aさんと私という複数の働き手をまとめて評価できる。こうやって、人材を選別していく。ふるいにかけていく。これは、マネージャーの立場になって、初めて分かったことだった。
少し前までは、経営者のAさんへの言動は、厳しいもの、そっけないものがあった。それが、Aさんへの指示や連絡は、他の人を介して行うようになった。経営者がAさんに直に顔を合わせたときは、打って変わって笑顔で接するようになった。Aさん自身は、こうした態度の変化に戸惑いながら、追い詰められていったように思う。
ほどなくして、契約していた社会保険労務士と税理士という、職場のコンサルタント的な立場の人が、経営者を頻繁に訪れるようになった。それからすぐだったと思う。フルタイムだったAさんが、パートタイムとなって、新たにがんばってもらうという連絡が職場内を回った。
ここで、ようやく全体が見えてきた。Aさんに降格や退職を本人に迫ることはパワハラになる。また、業務上の改善を指導しないでの降格や退職勧奨は、下手をすれば訴訟沙汰になるか、労働組合に相談される。こういったことを避けながら、私を介して、材料を仕入れていたのかもしれない。(つづく)